Inter-universal Geometry Center 宇宙際幾何学センター
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IUT理論に関する国際的な賞の創設および「第1回IUGCカンファレンス」を2024年開催

一般社団法人日本財団ドワンゴ学園準備会(理事長:山中伸一)は、2023年6月6日に設立を発表したZEN大学(仮称)(設置構想中)の研究機関である宇宙際幾何学センターInter-universal Geometry Center; 以下IUGC, 所長:加藤文元)において、京都大学数理解析研究所の望月新一教授によるIUT理論(Inter-universal Teichmüller Theory)の普及と発展を促すことを目的に、IUT理論に関する論文賞「IUT Innovator Prize」「IUT Challenger Prize」の創設および「第1回IUGCカンファレンス」の開催を発表しました。 
「IUT Innovator Prize」は、IUT理論とその関連分野における新しい重要な発展を含む論文を対象とし、最優秀論文の受賞者には毎年賞金2万ドル〜10万ドルを贈呈します。 
また、ドワンゴ創業者の川上量生(個人)による賞として、「IUT Challenger Prize」が創設されます。IUT理論について理論の本質的な欠陥を示した論文を執筆した最初の数学者に贈られ、賞金100万ドルが授与されます。 
IUGCカンファレンスは、第1回目を2024年4月に東京にて開催予定で、IUTの研究をリードする世界中の数学者たちが一同に会し、最新の研究成果について発表し、議論を行う場になることを目指します。 


■ IUT Innovator PrizeおよびIUT Challenger Prizeについて


<賞の創設に至る背景>

IUT理論とは正式名称はInter-universal Teichmüller Theory、日本語では宇宙際タイヒミューラー理論といい、京都大学数理解析研究所の望月新一教授によって、2012年にインターネット上で発表されました。 
IUT理論を用いて、整数を扱う数学理論の分野では「未解決の難問中の難問」ともいわれるabc予想が解決することから、発表時より数学界に大きな議論を巻き起こし、7年半におよぶ審査ののち、2021年に京都大学数理解析研究所が編集する国際専門誌『PRIMS』に掲載されました。 

そんな中、IUT理論については数学界では極めて珍しい混乱が起こっており、理論が正しいかどうかに懐疑的な数学者が存在する一方で、正しいかどうかの数学的議論は行われていないという異常な状態が続いています。 
理論の重要性にも関わらず、このような事態となった大きな要因として、望月教授の理論が巨大であるだけでなく独自性が高く、IUT理論の主張を理解するためには優れた数学者であったとしても、大変な時間と労力が必要とされることが挙げられます。 
今回、IUT理論にコミットする数学者の労苦に少しでも報いるために、上記の賞が創設される運びとなりました。この試みにより、IUT理論を学ぶ数学者がひとりでも増えることを期待したいと思います。 


<IUT Innovator Prizeの審査方法> 

2024年より10年間毎年、IUT理論とその関連分野における新しい重要な発展を含む論文1編を選出します。IUT Innovator Prizeの運営・審査および受賞論文の決定はIUGCが行います。 

➢ 審査対象:すでに数学専門誌に投稿され自薦・他薦により応募された論文で、IUT理論の新しいバージョンや応用、理論の論理構造に関する新しい解析、またはこれと密接に関連する領域における重要な寄与を含むもの。 
➢ 賞金の額は論文内容の新規性や寄与の重要性に応じて決定する。 
➢ 応募された論文は投稿先の専門誌における査読とは独立に、IUGCが指名するIUT理論の専門家集団による非公開の審査によって評価される。評価結果はIUGCにより決定・発表される。 

 <IUT Challenger Prizeの審査方法> 

審査は川上量生が個人として独自の判断で行います。 
審査の方法については非公開としますが、審査の対象とする論文については、『MathSciNet』に載っていて、かつ、過去10年間に数論幾何の論文が10本以上掲載されている数学の専門誌に査読の上で掲載されたものに限ります。 

■ 関係者からのコメント 


<加藤文元 (IUGC所長、東京工業大学名誉教授)> 

IUGCはIUT理論の普及と発展を推進するための様々な活動を行うことをその使命として誕生した、数学の新しい研究所です。IUT理論自身はもちろんのこと、遠アーベル幾何学などの関連する分野の研究振興、さらには理論研究の社会への発信や、そのフィードバックを通じた研究者のキャリア形成と社会還元という視野からも、多様な活動を主催しサポートしていきたいと考えています。IUGCとしては、今回の賞の創設と国際カンファレンスの開催が 
・IUT理論の発展・振興、特に若い世代の参画を奨励すること 
・世界の数学コミュニティがIUT理論について数学的に正確に定式化された形で健全な議論を行うことを強く呼びかけること 
の2点に対して有効に資するであろうことを重視しています。 


<イヴァン・フェセンコ (IUGC副所長、University of Warwick, Tsinghua University)> 

この11年間、IUT理論は多くの人によって学ばれ、徹底的に検証され、いくつかの国際ワークショップで議論され、解説されてきました。IUT理論の実質的な欠陥を証明する数学論文はいまだに出ていません。数学の世界では、新しい理論はその道の専門家によって評価されるのが常です。IUT理論の場合、その主な前提条件となる分野は遠アーベル幾何学であり、これは日本の数学者が世界をリードしている分野です。ですからIUT理論の論文が日本の数学雑誌で扱われることは最も適切なことでした。例えば、ガロア理論、ロバチェフスキーの双曲幾何学、量子力学、アインシュタインの一般相対性理論など、理論に対する有効な反論がないにもかかわらず、その評価に数十年を要した偉大な理論の例を我々は知っています。今回発表された新しい賞は、数学者がIUT理論を確認し、その美しさを評価し、またさらに発展させるよう、刺激を与えることになるでしょう。 


<川上量生 (ドワンゴ創業者)> 

真偽の判定が可能なはずのものが、いつまでたっても決着がつかずに議論されつづけるという現象は、政治や社会の至るところで、私たちが日常的に目にするありふれた光景です。 
しかしながら、そういったことは起こらないはずの数学においても、同様のことが起こっている珍しい事件に、歴史の証人として立ち会えたことを光栄に思います。 
私見ではありますが、問題の根本はIUT理論の正否を論じるために必要な学習コストが優れた数学者にとっても高くなり過ぎていることだと考えています。私が提供するささやかな報酬が、IUT理論に関わることを決意する数学者たちをひとりでも増やすことに貢献できればと願っています。 
IUT Challenger Prizeについては私の個人的な賞とすることにしました。だれに渡すかは私が自分で判断します。もちろん私は数学者ではありませんので、議論の正否を判断する能力はありません。私の望みは、IUT理論について、もし、間違っているのであれば、健全な数学的議論のもとで数学界で決着がつくことです。 

※関連ウェブサイト 
・IUGC(宇宙際幾何学センター): https://zen-univ.jp/iugc 
・ZEN大学(仮称)(設置構想中): https://zen-univ.jp/ 

【お問い合わせ先】
一般社団法人日本財団ドワンゴ学園準備会/IUGC 担当: 中澤   E-mail: iugc@zen-univ.jp