Inter-universal Geometry Center 宇宙際幾何学センター
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【IUGC】最大100万ドルを授与する論文賞の創設およびカンファレンス開催を発表

一般社団法人日本財団ドワンゴ学園準備会(理事長:山中伸一)は2023年7月7日(金)、日本外国特派員協会で記者発表を開き、ZEN大学(仮称)(設置構想中)の研究機関である宇宙際幾何学センター(Inter-universal Geometry Center; 以下IUGC, 所長:加藤文元)において、IUT理論(Inter-universal Teichmüller Theory)の普及と発展を促すことを目的に、IUT理論に関する論文賞「IUT Innovator Prize」の創設および「第1回IUGCカンファレンス」の開催を発表しました。また、ドワンゴ創始者の川上量生が個人的に「IUT Challenger Prize」を創設することを発表しました。

■IUT理論とは

IUT理論の正式名称はInter-universal Teichmüller Theory、日本語では宇宙際タイヒミューラー理論と言い、京都大学数理解析研究所の望月新一教授によって、2012年にインターネット上で発表されました。「未解決の難問中の難問」と言われるabc予想を解決する画期的な理論であることから話題になり、7年あまりの査読期間を経て、2021年に国際専門雑誌『PRIMS』に掲載されました。一方で、IUT理論の正しさに対する深刻な疑義があるにも関わらず、それを解決するための数学的議論は行われていないという、数学界では異例の状態が続いています。

その背景には、IUT理論が長大で独自性が高く、優秀な数学者でさえ理解をするために大変な時間と労力を要することが挙げられ、若い数学者の参入を妨げている要因にもなっていると考えられています。

■IUGC設立の目的

IUGCは、IUT理論を中心とした数論幾何学の発展を後押しする組織として誕生しました。運営資金および制定された賞金はドワンゴの創業者である川上量生が個人として出資。京都大学数理解析研究所の研究を引き継ぐのではなく、独自の判断と行動原理に基づいて活動することを基本理念とします。また、賞の贈呈やカンファレンスの開催によりIUT理論の研究に臨む数学者を奨励するとともに、入門的な解説や執筆支援も予定しています。

■2つの賞とIUGCカンファレンス

IUGCが主催する「IUT Innovator Prize」は、IUT理論自体の発展や新しい応用の発見など、IUT理論に関連するイノベーションに寄与した数学者または論文を表彰し、賞金が贈呈されます。10年間毎年、2万~10万ドルが贈呈される予定です。

また、ドワンゴ創業者の川上量生の個人による賞として、「IUT Challenger Prize」が創設され、IUT理論の本質的な欠陥を示した最初の論文ないしはその執筆者に賞金100万ドルが贈られます。すでに数学論文誌に掲載されたものに対し、間違いを指摘する論文を募ることは非常に稀なことです。

2024年4月には「第1回IUGCカンファレンス」を東京都中央区で開催予定。IUT理論に関わりのある重要な数学者たちを招待し、最新の研究成果の発表や議論および「IUT Innovator Prize」の受賞者の発表を行います。オーガナイザーは星裕一郎准教授(京都大学数理解析研究所)、加藤文元教授ZEN大学教授(予定)、望月新一教授(京都大学数理解析研究所)を予定しています。

🔳登壇者のコメント

モチベーションのある若い世代が安心できる研究環境を整える

IUGC所長、ZEN大学教授(予定) 加藤文元

IUT理論は長大な論文である上、その理解のためには専門性の高い理論に精通していなければならないという技術的なハードルの高さゆえ、発表から10年以上経った今でも研究グループは世界を見渡してもわずかです。これは今までの数学史を見ても異常な状況です。理解する人の層が形成されない限り、社会へは波及しません。

IUGCとしては、モチベーションのある若い世代が安心して研究に参加できる環境を整え、IUT理論に関する混乱した状況が是正され解決されることをニュートラルな立場から願っています。

歴史的事件に決着がつくことを期待

株式会社ドワンゴ創業者 川上量生

私は数学者ではありませんが、趣味で数学を勉強しています。数学者と接する中で「真実はひとつ」という価値観を大切にしている人々であることを実感します。その世界において、IUT理論に関しては疑義が曖昧なままの状態であることに驚きました。今まさに「歴史的瞬間に立ち会っている」と感じるとともに、IUT理論の理解に費やされる多大なる労力に対し見返りがあまりにも少ない状況も目の当たりにしています。そこでこのたび、ささやかな賞を設定することで、IUT理論における数学的議論が進展することに少しでも貢献できればと考えました。最終的な結論は肯定的でも否定的でも構いません。重要なのは、数学界における歴史的事件に決着がつくかどうかなのです。

すでに量子コンピューターの分野で応用されているIUT理論のさらなる発展を

IUGC副所長、ZEN大学教授(予定) イヴァン・フェセンコ

例えば、チャットGPTなどはせいぜい2つか3つの新しいアイデアに基づいているものであるのに対し、IUT理論には非常にたくさんの新しいアイデアあるいはコンセプトが存在します。IUT理論は、整数論において最もアルゴリズム的な理論であり、その中のアイデアを簡素化することによって多様な分野に役立てることが期待でき、すでに量子コンピューターの分野への応用に向けた研究も始まっています。IUT理論がさらに発展することは、未来の社会において幅広く役に立つ可能性を秘めています。

記者会見の様子は、YouTubeよりご覧いただけます。

https://youtu.be/Xy4i0rqy4eE